大工さんセンター設立趣意書

 近年、生活様式の変化や消費者ニーズの個性化に加え、新規住宅取得層の若年化とともに、住宅建築もその様式、デザイン、性能、構造、工法、工事内容などますます多様化の傾向にあります。
 特に、全国的に都市化の傾向が強まる今日では、都市化による地縁・血縁関係の崩壊、木造建物の減少のほか、大手・中小・異業種の新規参入と受注の競合など、新築、増改築工事を問わず、模様替え分野でも町場の小規模・零細な大工・工務店は年々苦しい立場に追い込まれています。
 一方、建築主の大多数は、できることなら従来と同様に「近くの腕の良い大工さん」に安心して工事を依頼したい、と根強く望んでいます。しかしながら、長年にわたり住宅建設の主役であった私たち住宅建築業者は、技能・施工力 は抜群でも、営業・資金・後継者育成そのほか前述のとおりいろいろ難しい問題が多くなり、残念ながら昔のようにうまく対応できなくなっているのが現状です。
 つまり、一般社会からいや応なく事業体質の改善と、一層の合理化を求められているわけであります。
 中でも、受注のための広報宣伝・情報交流活動は今までは皆無に等しく、これからは金融、資材購買、技能者教育などを含めた幅広い経営合理化対策が必要とされています。
 こん日、これらの 課題を解決するためには、1人よりも2人、2人よりも3人と大勢の事業者が力を合わせる一番合理的で効果的な方法によるほかありません。
 勿論、共同事業の運営はなまやさしいことではありませんが、伝統ある大工・工務店の事業者として継承者のためにも、また、建築大工技能士として優れた技能が正しく評価されるような仕組みを自分たちの手でつくり出していく義務と責任があります。
 以上のような現状をふまえ、本センターは社団法人日本建築大工技能士会の会員有志が結束し、専門委員会の事業部門として経済的地位の向上を目指し、ここに大工さんセンターの設立をしようとするものであります。有識者各位のご理解・ご賛同と、設立に対する積極的なご参加をお願いする次第であります。
 今後、本センターは学識経験者、業界関係者、関係企業その他本センターの目的にご協力下さる多くの方々のご指導を賜りながら、本センターの発展を通じて社団法人日本建築大工技能士会の発展と消費者の住生活機能の向上に寄与していく所存であります。